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近年、「シナリオの神様」と称される新藤兼人の監督デビュー作で、妻を病気で失うシナリオライターが主人公の半自伝映画である。映画の中に登場する監督が、新藤兼人の師匠である溝口健二がモデルだと分かるし、貧しいシナリオライターを励まし続ける妻役を乙羽信子が演じているのも興味深い。戦争の影が濃くなる時代に、何とか映画を作り続けようとする映画人の気質や時代背景をバックに、何度もシナリオの書き直しを要求する一見非常な監督、夫が一人前のシナリオライターになれるよう陰で支え続ける妻。人に対する思いやりや目的を達成するための努力。日本人が失いかけているものがある映画である。